| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-095  (Poster presentation)

モウセンゴケ属の花閉鎖速度の種間変異と食害圧の関係
Relationship between interspecific variation in flower closure speed in Drosera and herbivory pressure

*田川一希(宮崎国際大学), 大崎遥花(京都大学), 渡邊幹男(愛知教育大学)
*Kazuki TAGAWA(Miyazaki International Univ.), Haruka OSAKI(Kyoto Univ.), Mikio WATANABE(Aichi Univ. of Education)

モウセンゴケ属Droseraは、花周辺への接触刺激に応答し、2〜10分で花を閉鎖するというユニークな特徴を持つ。この接触刺激に応じた花閉鎖運動には、スペシャリスト植食者のモウセンゴケトリバBuckleria paludumの幼虫による食害を感知し、内部の胚珠を物理的に保護する機能がある。これまでの研究から、モウセンゴケ属の種間や種内の個体群間で、接触刺激に応じた花閉鎖の速度にバリエーションが存在することが分かっているが、これはモウセンゴケトリバによる食害圧の強さを反映し適応進化した結果かもしれない。本研究では、近縁のトウカイコモウセンゴケDrosera tokaiensisとモウセンゴケD. rotundifoliaを用いてこの仮説を検証した。温度・光条件を統制した条件下では、ピンセットによる接触刺激とモウセンゴケトリバによる食害のいずれを受けた場合でも、トウカイコモウセンゴケはモウセンゴケと比較して素早く花を閉鎖した。野外では、トウカイコモウセンゴケはモウセンゴケと比べてより乾燥した土壌に自生しており、葉や茎をモウセンゴケトリバに食害される頻度が高かった。乾燥した土壌ではモウセンゴケトリバが株間を移動しやすいため、トウカイコモウセンゴケは食害を受けやすく、花をより素早く閉鎖する形質が進化したのかもしれない。


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