| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-096  (Poster presentation)

乾燥ストレス下でVOCsを介した植物間コミュニケーションは駆動するのか?
Is plant-plant communication via VOCs driven under drought stress?

*萩原幹花(九州大学), 塩尻かおり(龍谷大学), 鹿島誠(東邦大学), 石原正恵(京都大学)
*Tomika HAGIWARA(Kyusyu Univ.), Kaori SHIOJIRI(Ryukoku Univ.), Makoto KASHIMA(Touhou Univ.), Masae Iwamoto ISHIHARA(Kyoto Univ.)

植物は、高温・乾燥・病虫害など様々なストレスに対応している。耐性・抵抗性制御機構の中枢を担っている植物ホルモンにおいて、乾燥ストレスへの耐性にアブシジン酸(ABA)、高温、病害への抵抗性にサリチル酸(SA)、虫害への抵抗性にはジャスモン酸(JA)というように個々の現象として研究されてきた。しかし、これら3つの植物ホルモンは独立に作用するのではなく、拮抗作用や相乗作用が存在していることが近年明らかになってきた。つまり、複数のストレスを同時に受けた場合と個々のストレスを受けた場合とでは、植物のストレスへの応答が異なってくると考えられる。
我々はこれまで、揮発性有機化合物(Volatile organic compounds; VOCs)を介した植物間コミュニケーション研究を、冷温帯林の優占種であるブナに着目し行ってきた。植物間コミュニケーションとは、食害や傷害を受けた葉から放出されるVOCsを受容した健全な他個体が、防衛力を高めその後の被害率が低くなるという現象である。我々はブナが傷害によるVOCs受容後にSAを蓄積すること、病害虫の被害が低下することを明らかにしてきた。現在、地球温暖化による高温・乾燥が問題になっており、冷温帯林に生育するブナもその影響をうける可能がある。本研究では、乾燥化による植物のストレス応答とVOCsを介した植物間コミュニケーションに着目し、乾燥下におけるVOCs受容による防衛反応への影響を明らかにすることを目的とした。ブナの稚樹を対象とし、乾燥処理・未処理時に葉から放出されるVOCsの違いを時系列で明らかにした。さらに乾燥化とVOCs受容実験により、3つの植物ホルモンの蓄積量を時系列で明らかにすることで、乾燥ストレス環境下における樹木の防衛応答明らかにし、VOCsの組成の違いと合わせて考察する


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