| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-099 (Poster presentation)
花粉の色は種間・種内で多様性が見られ、その進化要因の1つとして訪花者にとっての視認性が挙げられる。葯が裂開することで提示される花粉の色は訪花者に対する手がかりとなり、花粉媒介者の誘引を促進する。一方で、花粉の食害者を誘引してしまう可能性をあわせもち、これまでの研究により花粉の色は花被に対して目立たないように進化する傾向も見られている。葯のサイズは訪花者からの花粉の視認性に大きな影響を与える要因となるが、花粉の色と葯のサイズにどのような関係があるかは明らかになっていない。そこで、本研究では多種における葯のサイズと花粉の色を比較し、葯が大きい種の花粉は食害を防ぐために目立たない色をしている傾向があるのか、あるいはシグナルとして機能するよう目立つ色をしている傾向があるのかを検証した。
これを検証するため、葯が花被によって隠れず外部に露出する虫媒花17種を対象に葯及び花被のサイズを測定し、花粉をはじめとする花器官の色を測定した。そして、葯の長さや花被に対する葯の相対的な長さと、反射スペクトルや訪花者の視覚における花被に対する花粉の色コントラスト及び緑コントラストとの間に相関が見られるか、系統関係を考慮した解析を行った。
解析の結果、反射スペクトルにおける反射率の強さと葯の長さの関係は波長領域によって異なり、短波長から中領域において葯の長さと反射率の強さに正の相関が見られた。一方で、訪花者の視覚における花被に対する花粉の色コントラストは葯の長さとの間に有意な相関関係は見られなかったが、緑コントラストでは有意な正の相関が見られた。このことから、大きな葯を持つ種ほど花被に対して花粉の色が目立ち、花粉の色が訪花者に対するシグナルとして機能する傾向が示唆された。