| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-103  (Poster presentation)

冷温帯落葉広葉樹林の長期動態とナラ枯れ
Long-term dynamics of a cool temperate deciduous forest affected by Japanese oak wilt

*山﨑理正(京大院・農), 石原正恵(京大フィールド研), 高柳敦(京大院・農)
*Michimasa YAMASAKI(Kyoto Univ.), Masae ISHIHARA(FSERC, Kyoto Univ.), Atsushi TAKAYANAGI(Kyoto Univ.)

ミズナラやコナラがカシノナガキクイムシの穿孔によって病原菌に感染し集団枯死するナラ枯れは、時に大きな撹乱要因となる。太い木が穿孔対象となりやすく、ナラ枯れによる集団枯死は森林の種構成にもサイズ構造にも大きな影響を及ぼしていると考えられる。本研究では、冷温帯の針広混交林で30年継続した毎木調査の結果を解析し、大径木を中心とした種構成の変化を追跡することでナラ枯れによるミズナラの集団枯死が及ぼした影響を評価することを目的とした。調査地は、京都府北東部に位置する京都大学フィールド科学教育研究センター芦生研究林のモンドリ谷である。ここでは2004年に初めてナラ枯れによる被害が発生し、枯死木は以後2011年まで発生した。モンドリ谷の集水域全域に設置した16haのプロットで、1992年より5年毎に30年間、胸高直径10cm以上の樹木のべ10950個体を対象に毎木調査を継続し、5年間の成長・更新・枯死に関して6期分のデータを得た。25m四方のサブプロット単位で各種の胸高断面積合計を集計し、非計量多次元尺度構成法(NMDS)で種構成のサブプロット間の相違と30年間の変化を視覚化した。また、1992年時点で胸高直径が70cmを超えていた個体を大径木と定義し、優占種の大径木の30年間の動態を比較した。
NMDSの1軸2軸の平面では地形の変化に伴う種構成の変化が見られ、3軸4軸の平面では各種大径木による優占が特徴づけられた。スギが優占する尾根部では更にスギの優占度が高くなる変化が見られた。ブナは1期から4期にかけてほとんどの大径木が枯死し、斜面部に見られたブナの大径木優占林は消失したが、これに伴うNMDS1軸2軸、3軸4軸平面上での変化は小さかった。ミズナラはナラ枯れにより3期から4期にかけて胸高断面積合計が激減し、谷部の多様性の一翼を担っていたミズナラ大径木優占林が消失した。この変化はNMDS3軸4軸平面上で谷部集団の大きな変化として捉えられた。


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