| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-107  (Poster presentation)

屋久島原生照葉樹林の40年間の動態
Dynamics over 40 years of primary evergreen broad-leaved forests on Yakushima, Japan

*相場慎一郎(北海道大学), 秦大平(北海道大学), 萩原航紀(北海道大学), 渡部俊太郎(鹿児島大学), 竹口輝(鹿児島大学)
*Shin-ichiro AIBA(Hokkaido Univ.), Taihei HATA(Hokkaido Univ.), Kohki HAGIWARA(Hokkaido Univ.), Shuntaro WATANABE(Kagoshima Univ.), Akira TAKEGUCHI(Kagoshima Univ.)

屋久島のイスノキが優占する原生的照葉樹林に設置された毎木調査区を、1983−2023年の40年間にわたり5年間隔で調査した。調査下限サイズは胸高直径2cmである。瀬切川流域(標高500−600m)には、閉鎖林冠を持つ林分に合計面積0.44haの調査区(SC、0.04ha×11個)があり、林冠ギャップに合計面積0.18haの調査区(SG、面積不定×21個)がある。小楊子川流域の尾根(K1、700m)と谷(K2、540m)には、それぞれ面積0.2haと0.25haの調査区がある。これらのうち、SCとK1は、1993年調査の直前に1993年13号台風(Yancy)により大きな被害を受けた。
調査期間に瞬間最大風速50m/s以上が記録された台風は、Yancyを含め6個あり、5年間に死亡した幹の胸高断面積合計は1988−1993年に特に大きいわけではなかった。ただし、幹密度と平均個体重の関係を見ると、SCとK1では1993年から2003年(K1では2008年)まで密度が増加し、その後は自己間引きが進んでいた。2023年には、SCでは1993年より密度が低下していたが、K1では1993年の密度まで低下していなかった。また、除歪対応分析(DCA)により種組成の変化を見ると、Yancyによる被害を受けた後SCでは2003年まで、K1では2008年まで、その前後と異なる変化が認められた。一方、台風被害が軽微だったK2では、種組成にやや不連続な変化が見られたものの、40年間にわたって自己間引きが進んでいた。SGはSCに類似した種組成の変化を示し、台風後の密度はほぼ一定で、2003年から自己間引きが始まっていた。
以上より、Yancyが40年間の調査期間において最大の撹乱要因であったことが示された。また、台風被害は30年以上にわたり原生的照葉樹林の動態に影響することが明らかになった。


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