| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-112  (Poster presentation)

除草剤による管理が行われた畦畔草原の種組成
Species composition of semi-natural grasslands on rice paddy levees managed with herbicides

*澤田佳宏(兵庫県立大学, 県立淡路景観園芸学校), 藤原道郎(兵庫県立大学, 県立淡路景観園芸学校), 松村俊和(甲南女子大学)
*Yoshihiro SAWADA(Univ. of Hyogo, ALPHA), Michiro FUJIHARA(Univ. of Hyogo, ALPHA), Toshikazu MATSUMURA(Konan Women's Univ.)

 棚田畦畔に成立する畦畔草原は、年に数回の草刈りによって維持される半自然草原であり、里地里山においては草原生植物の主要な生育地である。近年、淡路島の中山間地域の農村では人口減少や高齢化が著しく、労働力が不足している。このため、管理労力を軽減するために、これまで行われていた草刈りをやめ、除草剤で草原管理を行う畦畔が徐々に増えている。本発表では、数年~10年にわたって除草剤散布が行われた畦畔草原において、群落の構造や種組成にどのような変化が生じているのかを報告する。
 調査地は淡路島北部のK地区とI地区とした。いずれの地区も棚田が広がる中山間地域で、高齢化等に伴って放棄農地が増加している。また、いずれの地区にも、数年~10年にわたって除草剤が散布された畦畔がある。2023年11月、それぞれの地域の除草剤で管理された畦畔(除草剤区)に1m×1mのコドラートを5点ずつ、計10点設置して植生調査を行った。比較のため、草刈りで管理されている畦畔(草刈り区)にもコドラートを5点ずつ、計10点設置して同様の調査を行った。除草剤区、草刈り区ともに、圃場整備は行われていない。除草剤区と草刈り区は、K地区では約50~100m、I地区では約10~30m離れている。K地区ではグリホサートが用いられていたことを農家への聞き取りで確認している。
 草刈り区では、コドラートあたりの種数は約20種で、チガヤ・ネザサが優占し、ツリガネニンジンやアキノタムラソウなど、多くの草原生植物を含んでいた。こうした組成は、これまでに報告されてきた畦畔草原と同様であった。一方、除草剤区では、コドラートあたりの種数は草刈り区にくらべて少なく約10種で、ナギナタガヤと思われるイネ科やスズメノカタビラなどの一年草が特徴的に含まれた。また、ブタナの出現頻度が高く、ブタナが優占する植分もあった。


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