| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-113 (Poster presentation)
阿蘇くじゅう国立公園の「くじゅう地区」では規模の異なる湿原や湿地が複数分布する。これらの湿生草原も乾性的である半自然草原と同様に人為的な管理の影響下で維持されてきた群落も存在し、後者と同様に利用の停止等により、生物多様性の低下が懸念される。しかし本地域での湿生草原群落の知見は少なく、多様性の保全上、問題となっている。そこで本研究の目的は本地域の湿生草原の群落の組成と構造の特性および種多様性と立地環境との関係を明らかにすることを目的とした。本研究は草原生態系の基盤となる群落の生物多様性や環境評価を簡易に行うための新規手法を開発するための基礎的データとすることも目的とした。
発表者らは2020年~2023年に2地区(K・Y)の計16地点で群落調査等を実施し、群落特性や多様性が高い群落型の成立要因について議論した(大窪ほか 2021、2022a、2023a、Okubo 2022b、Okubo et al. 2023b)。本研究ではこのうちの28プロットに、2023年に新規3地点等の45プロットを追加し、計73プロットで夏季に実施された植生および立地環境調査のデータを使用し、解析した。
ヨシやススキ、ヌマガヤ、トダシバの優占する群落型が多かった。中間湿原ではヨシやヌマガヤ、トダシバと共にマアザミやエゾアブラガヤ、ホソバサワオグルマ、エゾミソハギ、ヤチカワズスゲ等が各々優占する群落型が認識された。Y地区ではヤチカワズスゲやマアザミの群落型でムラサキミミカキグサとミミカキグサ、ホザキノミミカキグサ、イヌセンブリ、チョウセンスイラン等の絶滅危惧種が多く出現し、種多様性の高い群落型が確認された。K地区では絶滅危惧種のヒゴシオンやツクシフウロも出現するが、同時にニホンジカの食害を受け、多様性の低下が示唆された。本研究はJSPS科研費JP22K05706の助成を受けたものである。