| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-116  (Poster presentation)

モニタリングサイト1000アマモ場15年の変動:南限消失、震災、台風、浅場での減少
Variation over 15 years of monitoring site 1000 eelgrass bed survey: loss of southern limit, earthquake, typhoon impact, decline in shallow water

*山北剛久(海洋研究開発機構, 東京大学), 堀正和(水研機構), 田中義幸(八戸工業大学), 早川淳(東京大学), 上野綾子(日本国際湿地連合), 青木美鈴(日本国際湿地連合), 仲岡雅裕(北海道大学)
*Takehisa YAMAKITA(JAMSTEC, U-Tokyo), Masakazu HORI(FRA), Yoshiyuki TANAKA(Hachinohe Inst.Tech.), Jun HAYAKAWA(U-Tokyo), Ryoko UENO(WIJ), Misuzu AOKI(WIJ), Masahiro NAKAOKA(Hokkaido Univ.)

モニタリングサイト1000のアマモ場調査は2008年から、全国で6地域、8調査地(サイト)で実施されている。各サイトでは海岸から水深帯ごとに6~13点のサンプリング地点(ステーション)で、アマモ場の被度を記録した。15年(2008~2022年)の変動について、期間全体の長期及び5年程度の短期の双方の観点から、被度変化のトレンドをまとめ、相関する変動要因を探索した。特に、台風や地震などの突発的な事象に対して、より詳細に検討した。 その結果、15年間全体の傾向では、植生の被度が減少したサンプリング地点が15地点あり、調査地平均でも1サイトで被度が減少した(R2<0.2)。逆に、12のサンプリング地点で被度が増加し、調査地の平均でも1サイトで増加した。被度が減少した地点は、水深の浅い海域、特に南部に多かった。 台風に関連する攪乱の影響を検討した結果、寒帯域の北海道厚岸サイトでは、これまでは稀であった台風が到達し、2016年の台風後に平均被度が35%から11%へと減少した。一方、最南限の1年生のアマモが見られた鹿児島湾指宿では、被度変化率と8月以降の台風数の間に相関がみられ、毎年の台風による継続的影響が検出された。その後、厚岸では2021年にかけ植生が回復した一方で、指宿では2017年を最後に消失した。そのほかの変動要因として、沖縄などの南方では、水温や植食者の影響が挙げられるが、植食魚やウミガメのデータがないため、変動要因としての検討はできなかった。このように、15年の結果から、時期や地点ごとに要因は異なるが、短期間のイベント的な攪乱や長期間にわたる周辺環境の変化による影響が認められる。それらの発生時期や頻度によって植生回復の可否や、回復に要する時間が異なる。今後、懸念される気候変動や植食者の影響も含めて、環境要因や藻場の計時変化を観測し、評価や予測に活用することが課題である。


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