| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-118 (Poster presentation)
サザンカ(Camellia sasanqua)は、ツバキ科ツバキ属Oleifera節の常緑広葉樹である。野生のサザンカは四国、九州、南西諸島に分布しており、白い花が咲くが、一般的には栽培品種のピンク色の花が知られている。野生のサザンカを用いた系統学的な位置づけやサザンカ集団間の系統関係については明らかになっていない。そこで本研究では、ツバキ属内およびサザンカ集団間における系統関係を明らかにすることを目的とした。
野生集団と考えられる157個体について、MIG-seqによるSNPデータをde novo 及びCamellia属のreference genomeとしてC. sinensisのデータでmappingをし、RAxML、Splitstree、PCA、Admixtureにより系統関係や遺伝的分化を解析した。外群として同所的に生育する近縁の節のヤブツバキ(C. japonica)及びThea亜属とされるTheopsis節のC. lutchuensisを含めた。その結果、種間は明確に区別されたものの、ヤブツバキよりもC. lutchuensisが系統的に近縁であり、C. lutchuensisは近年のGRIN分類の結果と同様に、Camellia亜属に含まれる可能性が高いことが示唆された。サザンカ種内では、屋久島を含む九州地方、奄美大島、沖縄本島、石垣島・西表島、の4つの集団に区別された (18277SNPs; r0.1) 。九州地方では、屋久島の個体が本土個体との分化が見られたが、下甑島は本土と同じ集団に分けられた。本発表では、同所的に分布するヤブツバキと合わせて、Approximate Bayesian computation (ABC)を用いて集団動態を推定した結果についても報告する。