| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-119  (Poster presentation)

多雪植物群集の遺伝的分化を探る:25種を対象とした比較系統地理解析
Community phylogeography of 25 plant species in snowy regions of Japan

*阪口翔太(京都大学), 長澤耕樹(京都大学), 増田和俊(京都大学), 渡辺洋一(千葉大学), 廣田峻(大阪公立大学), 陶山佳久(東北大学), 髙橋大樹(東北大学), 沢和浩(フロラ山形), 堀江健二(旭川市北邦野草園), 坂田ゆず(秋田県立大学), 坪井勇人(白馬五竜高山植物園), 柳田宏光(小千谷市), 白井伸和(白山高山植物研究会), 石原正恵(京都大学), 福本繁(芦生生物相保全プロ), 藤木大介(兵庫県立大学), 阿部晴恵(新潟大学), 瀬戸口浩彰(京都大学)
*Shota SAKAGUCHI(Kyoto Univ.), Koki NAGASAWA(Kyoto Univ.), Kazutoshi MASUDA(Kyoto Univ.), Yoichi WATANABE(Chiba Univ.), Shun HIROTA(Osaka Metropolitan Univ.), Yoshihisa SUYAMA(Tohoku Univ.), Daiki TAKAHSHI(Tohoku Univ.), Kazuhiro SAWA(Flora Yamagata), Kenji HORIE(Asahikawa N. Wild Plants Gard.), Yuzu SAKATA(Akita Prefectural Univ.), Hayato TSUBOI(Hakuba Goryu Alp. Bot. Gard.), Hiromitsu YANAGIDA(Ojiya City), Nobukazu SHIRAI(Hakusan Alp. Plants Assoc.), Masae ISHIHARA(Kyoto Univ.), Shigeru FUKUMOTO(Ashiu Biol. Cons. Project), Daisuke FUJIKI(Hyogo Prefectural Univ.), Harue ABE(Niigata Univ.), Hiroaki SETOGUCHI(Kyoto Univ.)

生物種内の遺伝構造は,群集内で共通する地理隔離や環境変化に加えて,遺伝構造にばらつきをもたらす種特性やランダム要因が複合的に作用して形成される.従来の比較解析では,種間共通性をもたらす分化要因に焦点が当てられてきたが、遺伝構造をより正確に予測するためには、構造の発散要因に関する理解も等しく重要である.
日本海側多雪地帯には、多様な種特性をもつ植物が冷涼湿潤な環境に生育する。本研究ではこの多雪植物群の比較系統地理解析を行うことで、種内分化を生み出した地理気候要因と生物学的特性の影響を明らかにすることを目的とした。25種の被子植物から集団多型データを取得し、遺伝構造の類似性、分化度に関連する要因、分化の時間規模について検討した。
遺伝構造に関する高次相関解析の結果、分布標高と相関する3型の遺伝構造群が認められ、過去の分布変遷が標高帯毎に異なった可能性が示された。分化度に関するメタ解析では、地理隔離に加えて種特性としての分布標高・生活型・種子散布様式・分布密度の効果が検出された。デモグラフィ解析からは、大半の種で50万年前以降に地域集団が急速に分化したことが判明した.
以上の結果から、第四紀後期の低温寡雪の氷期気候により多雪植物の分布は種を問わず分断されたが、その影響は種の温度要求性によって異なったため,標高帯毎に遺伝構造が分化したと考えられた.さらに、遺伝子分散に関わる形質と浮動の影響を左右する分布密度の違いが、遺伝的分化の度合いにおける種間差を増強したと考えられる.


日本生態学会