| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-120  (Poster presentation)

送粉型間の遺伝子流動に注目したキスゲ属の集団動態推定
Demographic history of Hemerocallis focusing on gene flow among pollination types

*廣田峻(大阪公立大学), 陶山佳久(東北大学), 新田梢(麻布大学), 安元暁子(チューリヒ大学), 矢原徹一(QOU)
*Shun K HIROTA(Osaka Metropolitan Univ.), Yoshihisa SUYAMA(Tohoku Univ.), Kozue NITTA(Azabu Univ.), Akiko A YASUMOTO(Univ. of Zurich), Tetsukazu YAHARA(Kyushu Open Univ.)

本研究では受粉前隔離機構があるが受粉後隔離が不完全なキスゲ属の種分化の歴史を推定した。キスゲ属には開花時間や花色などの花の特徴が異なる種が存在し、それぞれ異なる送粉者に送粉される。特に、昼咲きと夜咲き、半日花と一日花という開花時間の違いは受粉前隔離に寄与する。しかし、種間雑種には稔性があり、浸透交雑集団も報告されている。本研究では、これらの種間で遺伝子流動の規模や方向、タイミングに違いがあるか検証するために、genome-wide SNPに基づく集団動態モデリングにより、過去の遺伝子流動を推定した。昼咲性半日花のノカンゾウとニシノハマカンゾウ、昼咲性一日花のトウカンゾウ、ゼンテイカ、トビシマカンゾウ、夜咲性半日花のキスゲを対象にした解析の結果、どの組合せでも種分化初期に遺伝子流動が存在したシナリオではなく、比較的最近になって遺伝子流動が生じたというシナリオが選択された。さらに、種間の遺伝子流動は低頻度でしか生じていないことが示唆された。この結果から、キスゲ属では種分化は異所的に始まり、二次的接触を経ても生殖隔離が維持されていることが示唆された。


日本生態学会