| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-122 (Poster presentation)
樹木の細根の細根は、水分・無機栄養塩等の土壌資源の吸収・獲得を司る重要な器官である。このため、各個体の細根の空間配置は、微地形や土壌資源の不均一性に対応していることが予想される。しかしながら、非破壊的な目視が難しい地下部における、個体レベルでの細根の空間的な広がりを把握することは極めて困難である。そこで本研究では、細根の遺伝解析を通して、個体レベルでのブナの細根空間分布把握と分布に係わる要因の解明を目的とした。
苗場山麓のブナ林試験地内に10m×8mのサブプロットを設定し、1mメッシュの交点(計99点)から有機物層および鉱質土層の土壌・細根のサンプルを採取した。採取した土壌サンプルは含水率、pH、炭素・窒素濃度を測定した。また採取した有機物層の細根断片のうち、生重の大きいものから上位20本を選別して重量を測定したうえで、8本についてマイクロサテライトを用いた個体識別を行った。さらに、地上LiDARを用いた地形・樹木の点群データを取得し、微地形構造を明らかにすると共に、個体毎の3次元点群データをもとに樹冠分布を求めた。これらのデータを統合して、サブプロット内における個体毎の有機物層における細根の分布(有無)と分布に影響を与える要因について解析した。
その結果、各メッシュの有機物層における個体別の細根の有無を89%の精度で推定するcforestモデルにおいて、細根の分布は地上部からの距離や樹冠範囲、空間自己相関性に加えて、他の個体の細根量が影響することが推測された。また、影響度は低いながら、地形の凹凸度や有機物層厚、土壌水分条件、有機物層などの関与も検出された。