| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-123  (Poster presentation)

温帯林のツル植物における水平・垂直方向へのクローン成長戦略
Horizontal and vertical clonal growth strategies in temperate lianas

*森英樹(森林総合研究所), 上條隆志(筑波大学), 正木隆(森林総合研究所)
*Hideki MORI(FFPRI), Takashi KAMIJO(University of Tsukuba), Takashi MASAKI(FFPRI)

木本つる性植物(以下、ツル植物)は、林床から林冠までの森林階層に生育するクローナル植物である。ツル植物は、明るい林冠に向かって垂直方向に、暗い林床では水平方向に成長し、見かけ上の個体であるラメット(以下、個体)を形成して分布を拡大する。このクローン成長を伴う生活史戦略は種によって異なる。例えば、イワガラミは林床でのクローン成長後に登攀を開始するが(水平成長優先型:水平方向→垂直方向)、フジは林床のクローン成長は親株を起源とするものであり、その後匍匐茎を林床で展開する(垂直成長優先型:垂直方向→水平方向)。しかし、これらの類型が他のツル植物種に適用できるかは明らかではない。本研究は、日本のツル植物が垂直成長優先型と水平成長優先型に類型化できるかを明らかにすることを目的とした。対象種は、以前に類型化された4種(フジ、イワガラミ、ツタウルシ、ツルマサキ)に加え、8種(サルナシ、ヤマブドウ、ツルウメモドキ、ミツバアケビ、マツブサ、ツルアジサイ、テイカカズラ)を含む。北茨城市や三宅島の温帯老齢林で、樹木を登攀する前の林床小型個体と登攀後の個体をサンプリングし、SSRやSNPにより遺伝子型を推定し遺伝構造を分析した。林冠に到達し大型個体に成長するフジ、ツルウメモドキ、サルナシ、ヤマブドウの4種はクローン成長で個体が増加している場合、その周囲には必ず登攀個体が存在することから、垂直成長優先型であり、その他の8種は水平成長優先型と考えられた。垂直成長優先型の4種の内、フジとツルウメモドキが林床小型個体と登攀個体が同時に出現するのに対し、サルナシとヤマブドウは林床小型個体が存在しないことから、サルナシとヤマブドウは樹冠で主に水平成長すると考えられた。このことから、垂直成長優先型は生活史において、垂直成長により樹木を登攀した後、種によって異なる森林階層で水平成長することが示唆された。


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