| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-125 (Poster presentation)
浮遊性の水草であるウキクサ植物は、主にクローン増殖を行い開花は稀である。一方で、日本の水田によく見られるアオウキクサは、イネの収穫前に開花・結実する一年草の生活史をもつ。アオウキクサは短日植物であり、高緯度では限界日長が長い早咲きの傾向があり、低緯度では限界日長が短い遅咲きの傾向がある。全国のアオウキクサの限界日長を調べたところ、緯度クラインに加え、イネ品種により異なる水田の湛水期間にも適応しているようであった。
鹿児島には、湛水期が4月~8月の早稲(主にコシヒカリ)と、6月~10月の晩稲(主にヒノヒカリ)の水田がある。そこで、早稲と晩稲の水田においてアオウキクサの開花フェノロジー調査を2年間行った結果を報告する。1年目の調査では、早稲水田では5月頃から開花が始まりイネの収穫まで開花を続ける個体がほとんどであり、晩稲水田ではイネの収穫まで開花せずに水路で越冬する個体がほとんどであった。調査地を変更した2年目の調査では、早稲水田では1年目の調査地と同様に5月頃から開花を続ける個体がみられたが、晩稲水田では8月頃からすべての水田で開花がみられた。このように、鹿児島の水田では、早稲では常時開花性、晩稲では常緑越冬性と短日開花性の、合計3タイプの開花フェノロジーがみられた。現在系統解析を進めており、これらの結果と合わせて、フェノロジー多様化について議論したい。