| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-142  (Poster presentation)

日本海側と太平洋側に生育するハウチワカエデの材の性質と曲げ耐性
Wood anatomy and tolerance to the bending in Acer japonicum living in the contrasting snow depth

*吉村謙一, 横山大輝(山形大・農)
*Kenichi YOSHIMURA, Daiki YOKOYAMA(Yamagata Univ.)

日本海側の多雪地に生育する樹木は太平洋側の少雪地とは異なる形態形質をもつ種が多い。しかし、このような形質の多くは多雪・少雪環境で生存する上で適応的であるかどうか分からない。そのため、気候変動にともなう積雪環境の変化が生育地の拡大縮小や分布域の変動にどのような影響をもたらすか不明である。
樹木が直立して生育するためには風や自重といった力に対応するために力学的に堅く保つ必要がある。一方で、多雪地に生育する低木は冬季の間雪の中に埋もれることにより雪の沈降圧に晒されるため、柔軟性を持つ必要がある。そこで、広域に分布する樹木において日本海側・太平洋側で幹の力学特性にどのような違いがあるのか明らかにすることを目的とした。
現地において立木状態で引張試験をおこない、曲げ弾性係数の空間分布を測定した。曲げ応力に対するたわみ量は幹基部では先端に比べて小さいが、これは幹基部で直径が大きいためであり、曲げ弾性係数はむしろ先端部の方が高かった。曲げ弾性係数の地域差をみると、日本海側の樹木は幹基部において曲げ弾性係数は小さく、先端部の曲げ弾性係数は地域によって変わらなかった。このことから幹基部の弾性が積雪地での生育にとって重要である可能性がある。
地域によって幹の曲げ弾性係数が変化する要因を明らかにするために組織重量の測定や解剖観察をおこなった。材密度は地域間で変わらず、材の組織体積率はむしろ日本海側の方が高かった。日本海側の樹木では幹断面内でG層形成、木部繊維細胞壁厚などの解剖特性が不均質であり、これが曲げ弾性係数の地域差を生じさせた可能性が指摘できる。


日本生態学会