| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-145  (Poster presentation)

短い生育期間に対する高山植物の局所適応の鍵: 炭素キャリーオーバーの可能性
A key factor of local adaptation in alpine plants to short growing season: possible importance of carbon carry-over

*小林真, 関宰, 工藤岳(北海道大学)
*Makoto KOBAYASHI, Osamu SEKI, Gaku KUDO(Hokkaido Univ.)

個体群の局所適応に関係する要因を理解することは、生物の小進化プロセスを理解する上で重要である。過去の研究から、大雪山では雪解け時期の違いが時間的な生殖隔離を介して、多年生落葉草本であるミヤマキンバイ種内での小進化を引き起こしていること、特に雪解けが遅く土壌が湿潤で他種との競争が激しい場所の個体群(雪田個体群)では、雪解け時期が早い場所の個体群(風衝地個体群)に比べて草丈が高く、競争力が高い形質に分化していることが知られている。しかし、生育期間の短いハビタットにいる雪田個体群で、どのように急速な地上部成長を達成できているのか、その生理生態学的なメカニズムは不明である。本研究では、短期間で地上部成長を達成するメカニズムとして、「雪田個体群は風衝地個体群に比べ、地下部に蓄積していた前年の光合成産物を当年成長に多く利用している」という仮説の検証を行った。大雪山のヒサゴ沼周辺において、2021年夏の生育最盛期に炭素安定同位体でラベリングをした二酸化炭素を風衝地と雪田のミヤマキンバイ個体群に吸収させるとともに、翌2022年に植物体の地上部にどれほど前年にラベリングされた炭素が含まれるのかを調べた。分析の結果、雪田個体群では、翌年の地上部により多くのラベリングされた炭素が含まれていた。この結果は仮説と矛盾するものではなく、高山生態系の短い生育期間に対して多年生落葉草本植物が局所適応する上で、地下部の貯蔵機能が重要な働きを果たしていることを示唆している。


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