| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-146  (Poster presentation)

海氷藻類Detonula confervaceaの海氷凍結温度以下の低温での増殖特性【O】
Growth characteristics of the sea ice alga Detonula confervacea at low temperatures below the freezing point of sea ice.【O】

*川崎由乃(神奈川大学)
*Yukino KAWASAKI(Kanagawa Univ.)

微細藻類は、海洋生態系の一次生産者として重要である。1960年代に様々な培地が開発され、実験室で培養できるようになると、環境要因に対する増殖応答が解析されるようになった。極域海洋には0℃以下の低温環境で微細藻類が存在する。しかし、結氷温度付近での培養実験の難しさから、0℃以下の低温環境での増殖応答はこれまでほとんど測定されていない。本研究では、環境条件の精密な制御により結氷温度付近で増殖速度の解析を試みた。不凍液で満たした小型冷凍庫に温度制御装置を接続し、0℃以下の低温環境を再現した。これに海氷下を模した青色面発光LEDを取り付け安定化電源で制御した。この培養庫内でmultiwell plate (多穴皿)を用いて藻類細胞を培養した。培養庫内で環境を変えることなしに多穴皿内の細胞の撮影するためUSB顕微鏡を用いた。一定期間ごとに撮影した画像から、コロニーの変化を計測し、増殖速度を算出した。庫内の不凍液により温度変化は±0.1℃以下に抑えられた。安定した温度環境では一時的な温度低下で培地が凍結することはなかった。穴の底面での光強度を精密に調整することで、藻類細胞の生育光環境を調整できた。増殖を-2℃で測定すると暗黒下で増殖せず、25・50 μmol photons m-2 s-1で盛んに増殖した。増殖は100 μmol photons m-2 s-1でも認められたが速度は著しく低下し、200 μmol photons m-2 s-1の光強度では増殖が認められなかった。小型培養庫と多穴皿を用いた本研究の手法は、環境の精密な制御によりコロニー毎の増殖速度の測定を可能にした。その結果-2℃では僅か100 μmol photons m-2 s-1で強光により増殖が低下することを明らかにした。


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