| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-153  (Poster presentation)

アラスカ内陸部永久凍土傾度における低木イソツツジ亜節2種の細根形質変異
Root-trait variations of two closely related common shrub species (Rhododendron subsect. Ledum) across a permafrost gradient in Interior Alaska

*甘田岳(海洋研究開発機構), 野口享太郎(森林総合研究所), 岩花剛(アラスカ大学), 小林秀樹(海洋研究開発機構)
*Gaku AMADA(JAMSTEC), Kyotaro NOGUCHI(FFPRI), Go IWAHANA(UAF), Hideki KOBAYASHI(JAMSTEC)

近年、周北極域では温暖化が急速に進行しており、生態系における永久凍土融解の影響が懸念されている。しかし、永久凍土環境にて優占度の高い低木がどのように凍土環境に応答しているのかは明らかではなく、特に永久凍土の影響を直接的に受けていると考えられる地下部形質の評価は不十分である。本研究では、凍土融解に対する低木種の応答を予測するために、広域優占種群であるイソツツジ亜節(Rhododendron subsect. Ledum)に着目し、アラスカ内陸部の不連続永久凍土帯の永久凍土傾度サイトにて、地下部形質の種内・種間変異を評価した。活動層(永久凍土上で季節的に凍結・融解する地表層)の厚い環境で優占度の高いR. groenlandicumと近縁矮性種であり活動層の薄い環境で優占度の高いR. tomentosumを各サイト10個体ずつ採集し、細根、地下茎、当年葉の形質を測定した。葉形質に関しては、先行研究と同様、R. groenlandicumに比べて、R. tomentosumの乾重当たりの葉面積(SLA)が小さく、R. tomentosumの方がより資源要求性の低い葉をもつことが示唆された。細根形質に関しては、R. groenlandicumに比べて、R. tomentosumの方が細根乾重当たりの細根長(SRL)が大きく、細根組織密度(RTD)と細根平均直径が小さい傾向があった。一方、主成分分析より、細根の経済スペクトラム(SRL、RTDが指標)と葉の経済スペクトラム(SLAが指標)では主成分軸が異なっており、細根形質と葉形質は独立して永久凍土環境に応答していることが示唆された。以上より、低温で貧栄養な永久凍土環境では、SRLが大きくRTDの小さい細い根がR. tomentosumの生育に貢献している可能性、地上部と地下部では永久凍土環境への応答性が異なっている可能性が示唆された。


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