| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-156  (Poster presentation)

暗黒下での長期生存を可能にする球状集合体マリモ (Aegagropila linnaei)の生理特性【発表取消/Cancelled】
Physiological traits of Marimo (Aegagropila linnaei) that enables long-term survival in the dark【発表取消/Cancelled】

*河野優(神奈川大学), 中島康成(神奈川大学), 小原晶奈(神奈川大学), 小川麻里(安田女子大学), 尾山洋一(釧路市教育委員会), 若菜勇(釧路国際WC), 鈴木祥弘(神奈川大学)
*Masaru KONO(Kanagawa Univ.), Yasunari NAKAJIMA(Kanagawa Univ.), Akina OBARA(Kanagawa Univ.), Mari OGAWA(Yasuda Women's Univ.), Yoichi OYAMA(Kushiro Board of Education), Isamu WAKANA(Kushiro Int'l Wetland Center), Yoshihiro SUZUKI(Kanagawa Univ.)

釧路市阿寒湖のチュウルイ湾に生息する糸状性の淡水性緑藻Aegagropila linnaeiは集合して球状体(マリモ)を形成することが知られている。最大直径30cmもの大きさのマリモが観察できるのは世界で阿寒湖のみであり、国の特別天然記念物として保護されている。成長を光合成に依存するマリモはできるだけ深部まで光を届ける必要がある一方で、内部の大部分は、長期間、光の届かない暗黒条件に曝される。そのため、呼吸が光合成を上回ると成長できなくなり球状体の維持が困難になってしまう。さまざまな大きさのマリモで光合成を解析したところ、マリモは光に馴化した表層細胞と長期暗所に馴化した内部の芯細胞からなることが分かった。暗所馴化した芯細胞は光合成活性を残しつつ、低呼吸速度と細胞分裂の抑制が見られた。こうすることで、マリモの光合成を保ち、集合体の維持に寄与していた。また、芯細胞は長期間の暗黒条件にも関わらず、光合成活性を保持していた。自然環境下では大きなマリモが崩壊して、バラバラになったマリモ片が再び球状体として成長していくと考えられている。芯細胞に急な新規光環境に曝したところ、表層細胞への馴化は約13日と非常によく対応していた。一方、表層細胞では、青色光や赤色光はより表面部分で多くが吸収されてしまうのに対し、緑色光はより深部まで届いて青・赤色光が届かない領域の光合成を駆動していることが示唆された。また、クロロフィル蛍光として放出された光を再吸収して、緑色光による光合成を手助けしている可能性も示唆された。


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