| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-157 (Poster presentation)
日本には超塩基性岩由来の蛇紋岩土壌と火山由来の強酸性土壌(以下、硫気荒原)という対照的な土壌がある。一般的に、蛇紋岩土壌は、pHが6−8で、MgとNiの値が高く、Ca、N、P、Kが低くなるのに対し、温泉や火山の噴気孔周辺に見られる硫気荒原は、土壌pHが低いうえ、Al3+による生育阻害を受けるといった極端な環境条件によって特徴づけられる。このことから、蛇紋岩土壌や硫気荒原に生育する植物は、それぞれの環境ストレスに対処するための特性を有している可能性がある。そこで本研究では、これらの土壌に生育する植物のイオンプロファイルを測定し、植物ごとの元素吸収特性について考察した。
蛇紋岩土壌のスペシャリスト(ネコヤマヒゴタイSaussurea modesta)およびゼネラリスト(イブキジャコウソウThymus quinquecostatus)、硫気荒原のスペシャリスト(Fimbristylis dichotoma subsp. podocarpa)およびゼネラリスト(ミズスギLycopodium cernuum)、両土壌に生育するゼネラリスト(ススキMiscanthus sinensis、サルトリイバラSmilax china、リョウブClethra barbinervis)から成熟葉を採取した。また、非蛇紋岩・非硫気荒原土壌からも採取した。乾燥した植物試料をHNO3-H2O2で分解し、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて元素分析を行った。土壌のpH(H2O)はpHメーターを用いて測定した。
土壌に関して、Mg濃度は蛇紋岩土壌の方が高く、Al、Ca、Fe濃度は、硫気荒原の方が高い傾向にあった。硫気荒原と一般土壌のAl濃度は同程度であった。植物体元素濃度は、既知の集積植物と同様にミズスギのAl濃度は高かった。その他の硫気荒原植物に関しては、Al濃度は低く、Al吸収を回避する戦略を持っている可能性が示唆された。
これらの結果から、土壌が植物体元素濃度に影響を与えるほか、植物によって元素吸収特性が異なることも確認された。また、蛇紋岩土壌と硫気荒原土壌の両方に生育する植物は、幅広い環境に適応していることが考えられた。