| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-169 (Poster presentation)
自然撹乱は森林の生態系サービスを激変させる要因の一つである。日本の森林面積の18%を占める主要植林樹種であるスギは、雪害による撹乱を頻繁に受けることが知られている。近年は林業従事者の減少の影響もあり、雪害を受けたスギ林が管理されずにそのまま放棄されることも多い。このようなケースでは撹乱跡地に再植林がされず、木材供給サービスが著しく低下する可能性がある。他方、放棄されたスギ林は天然更新によるスギとその他樹種の混交林化が進み、木材供給とは異なる供給サービスを提供する可能性がある。本研究では、生態系サービスの内、供給サービス(特に木材供給および食料供給)に焦点をあて、雪害が供給サービスに及ぼす影響を、岐阜県高山市の冠雪害を受けたスギ林分における毎木調査とソーシャルセンシングを用いた情報解析に基づいて検討した。毎木調査の結果から、冠雪害を受けたスギ林では販売可能なスギの健全木が減少する一方で、タラノキ、コシアブラ、ハリギリ等の落葉低木の侵入が見られた。インターネット販売の調査から、これらの芽は、山菜として地域で消費されるだけでなく、インターネット等の活用により直接販売されていることが明らかになった。これらの結果から、冠雪害は、木材供給サービスを減少させる一方で、食料サービスを増加させることが示唆された。