| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-170 (Poster presentation)
ナラ枯れ被害を受けた後、ニホンジカCervus nipponによる更新阻害が発生していると推測される高円山 (奈良市) の二次林と植林地において、森林構造を明らかにすることを目的として0.53 haの毎木調査を行い、27科51種1,250本の樹木を計測した。樹種の胸高断面積 (BA) をもとにして、小調査区 (10 m × 10 m) をクラスタAからEの5つに階層的クラスタ解析法で分類した。クラスタAはヒノキChamaecyparis obtusaが優占するヒノキ林 (幹密度 2,300.0本/ha、BA 64.84 m2/ha)、クラスタBはスギCryptomeria japonicaが優占してヒノキやカナクギノキLindera erythrocarpaが混じるスギ林 (幹密度 1,425.0本/ha、BA 86.86 m2/ha)、クラスタCはオオアブラギリVernicia fordiiが優占するオオアブラギリ林 (幹密度 3833.3 本/ha、BA 48.15 m2/ha)、クラスタDはコナラQuercus serrataとクヌギQuercus acutissimaが優占し、ソヨゴIlex pedunculosaやカラスザンショウZanthoxylum ailanthoidesなどの広葉樹が混じるコナラ・クヌギ林 (幹密度 2058.8本/ha、BA 33.06 m2/ha)、クラスタEはシロダモNeolitsea sericeaなどの常緑広葉樹にナンキンハゼの混じる常緑広葉樹林 (幹密度 2742.1本/ha、BA 18.13 m2/ha) であった。どのクラスタも、ニホンジカの不嗜好植物に比べて嗜好植物の小径木が少なかった。ニホンジカの採食圧によって不嗜好植物であるナンキンハゼTriadica sebiferaやオオアブラギリ、シロダモ、クロバイSymplocos prunifolia、ヒサカキEurya japonica,アセビPieris japonicaなどが更新する一方、コナラ・クヌギなどの林冠形成木の更新は困難である。