| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-176  (Poster presentation)

大気ー植生動態モデルによる森林撹乱後の群落構造およびGPPの長期変動解析
Longterm variations of canopy structure and GPP of the forest after disturbances using an atmosphre-vegetation dynamics interaction model

*戸田求(広島大・院統合生命)
*Motomu TODA(Hiroshima Univ.)

将来の気候変動は世界の様々な森林生態系の機能や構造に深刻な悪影響を及ぼすリスク因子として懸念される。欧州では2000年代に入りこれまでに例のない極端な高温や乾燥傾向(以下、熱波とする)が頻繁に認められており、欧州の至る所で森林の大規模火災や樹木の大量枯死が毎年のように発生している。現在、発表者は気候変動による生態系撹乱評価の一環として近年の熱波イベントによる生態系損傷が著しいドイツのブナ林生態系を研究対象とし、大気ー植生動態モデル(MINoSGI)を用いて熱波が欧州森林の炭素吸収能変動に及ぼす影響を調べるシミュレーション実験を行っている。対象とするブナ林は10種程度の落葉広葉樹で構成されるが、2018年の大規模熱波の発生により複数の優占種に脱葉や立枯れ枯死傾向が目立つようになった。同森林で実施される炭素フラックスの連続モニタリングデータの結果によれば、2018年の夏以降にGPPはそれ以前に比べ大きく低下し、その後も回復速度が遅い状態が続いていることがわかった。この原因には優占種の光合成機能低下による影響が挙げられるが、加えて群落構造の複雑性低下による影響も可能性として考えられる。そこで、本研究発表では林冠構造と炭素吸収機能との関係性を精査する数値モデル解析結果の一例を示す。


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