| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-177 (Poster presentation)
樹木細根は直径2ミリ以下の先端部をしばしば指し、養水分の吸収器官として重要なだけでなく、土壌構造の改変や、土壌炭素の蓄積源として重要な働きを持っている。また細根から滲出する有機物によって、その周辺に根圏と呼ばれる独自の環境を構築することが知られている。一方、北緯66度以北に広がる周極域北方林の土壌には、膨大な量の炭素が数千年に亘って泥炭(Peat)として蓄積されている。これらのPeatは、排水による泥炭地の人工林化などの人間活動をきっかけに分解がすすみ、温暖化ガスである二酸化炭素の放出を加速して、流域からの溶存有機物(DOM)の流出を招く危険性が懸念されている。Peatの分解は溶存性の易分解性DOMが土壌微生物活動のプライミング効果を引き起こすことで進行することから、根からの滲出物が土壌微生物活動を刺激し、分解を促進させてる可能性が考えられる。しかしこれまで、根からの滲出物がPeatの分解に与える影響は殆ど明らかでない。そこで本研究は、北方林の根の滲出物を採取し、成分及び根系構造との関連、Peatの分解にもたらす影響を評価することを目的とした。2022年夏にフィンランド北東部でヨーロッパアカマツの根から根の滲出物を採取した。同時に試験地よりPeatを採取し、滲出物を与えて分解の変化を視た。また根の構造に伴う滲出物の溶存炭素濃度の変化や無機養分の変化を解析した。その結果、根の滲出物はPeatの分解を促進する効果を持つこと、根の構造によって滲出物の成分量が影響を受けることが示された。