| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-180 (Poster presentation)
下層植生の消失が生態系機能に及ぼす影響を明らかにするために,北海道足寄町に位置する九州大学北海道演習林のミズナラ林とカラマツ林に2013年に下層除去試験地を設定した。本報告では,下層除去試験地において,地上部バイオマスの成長量とリターフォール量ならびにリターフォール中の窒素濃度を測定し,地上部純一次生産(ANPP)と樹木の窒素利用の変化を検討した。試験地はカラマツ (L) とミズナラ (Q) のそれぞれ5 林分に10m四方のプロットを2つずつ設置し,下層植生を除去したプロットをT,除去していないプロットをC と名付けた。地上部バイオマスはLよりもQの方が大きい値を示したが,樹種間ならびに処理間に有意な差はなかった。地上部バイオマスの成長量はCよりもTで小さい値を示した。また,成長量の減少はLで顕著であった。リターフォール量はLよりもQで大きかったが,処理間に有意な差はなかった。地上部バイオマスあたりのリターフォール量は樹種間ならびに処理間に有意な差はなかった。ANPPはQで大きく,Tで小さい値を示したが,種間ならびに処理間で有意な差はなかった。地上部バイオマスあたりのANPPはLではCよりもTで小さい値を示したが,樹種間ならびに処理間に有意な差はなかった。リターフォール中の窒素濃度はLで高かったが,処理間で有意な差はなかった。リターフォールによる林床への窒素供給量はLよりもQの方が大きかったが,処理間で有意な差はなかった。
以上の結果から,長期にわたる下層植生の消失は地上部バイオマスの成長量を低下させることが示された。また,その成長量の減少は広葉樹をカラマツ人工林化することで顕著になることが示唆された。下層植生除去がリターフォールをかいした窒素循環量には影響しなかったこととあわせると,成長量の減少は窒素制限によるものではないことが示唆された。