| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-182 (Poster presentation)
将来の気候変動抑制に対して、森林が持つ二酸化炭素吸収機能や蒸発散作用による気候緩和機能等の多面的機能を発揮させることが期待されている。京都府南部に位置する暖温帯落葉広葉樹林(京都府木津川市、山城水文試験地)は、砂防事業の一環として整備され、100年以上にわたってその機能を維持してきている。同森林は過去に松枯れやナラ枯れ等の虫害や台風等による被害を受けつつも、その現存量を年々増加させており、炭素貯留機能も発揮してきている。本研究では、炭素貯留機能を評価するうえで重要な、暖温帯落葉広葉樹林の光合成・呼吸・蒸散等の二酸化炭素交換特性および水利用効率についての詳細について解析を行う。対象とする山城水文試験地では、気象観測タワーを用いて、渦相関法による森林の二酸化炭素吸収量の連続観測および日射、気温、降水量等の環境測定を2000年より継続している。同流域内では、2013年に初めてコナラの穿孔被害が観測され、2015年では流域内の全域に穿孔被害が拡大した。毎木調査により得られた流域内のコナラの地上部現存量は2009年には5.22kg m-2、2014年の6.34kg m-2であり、2020年には6.13kg m-2に減少していた。気象観測による二酸化炭素吸収量の測定からは、測定初期の2000-2003年ごろの年間1.3tC ha-1程度の吸収量から漸増を続け、2018-2019年では約4.0tC ha-1程度へと増加していることが分かった。また、二酸化炭素濃度は年々増加しており、2023年の平均値は約425ppmであった。