| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-185 (Poster presentation)
東シベリアの環境は急激に変化している。優占樹種であるカラマツがこの変化にどのように応答していくのかを明らかにするためには、過去の気候変動に対する応答パターンの把握が必要不可欠である。これまで、長期平均的な気温・降水量変動に対する樹木応答は良く調べられてきた。一方で、突発的に起こる極端気象に対する樹木応答・脆弱性に関する理解は進んでいない。
本研究では、樹木年輪国際データベース(ITRDB)に登録されている東シベリア(60<N, 120<E<150)の33サイトを対象として、過去の極端な乾燥・低温イベントの観測頻度と、その際の樹木の成長量減少量やそこからの回復過程について調べた。極端な乾燥・低温イベントは、観測ベースの気温・降水量時系列データ(Climate Research Unit 0.5°月平均グリッドデータ)を用いて、過去120年間の平均値からの外れ具合で検出し、ITRDBに登録されている樹木年輪幅時系列からその際の成長量減少量や、その後の回復過程を推定した。
その結果、顕著な樹木成長量減少イベントの気象的要因、さらには将来の衰弱・枯死リスクとの関連が指摘されている回復力(減少量で重みづけしたイベント前後5年間の平均成長量の比)についての東西差が観測された。この結果から、極端な低温に対する脆弱性が高いサイトが東部に多く分布している可能性が示唆された。また、中央シベリア・極東シベリアのサイトとの比較において、東シベリア東部のサイトの回復力の低さはより顕著であった。