| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-190 (Poster presentation)
世界の人口増加や経済発展に伴い、化学肥料や化石燃料の消費が増加し、大気中の反応性窒素が増加しており、大気からの過剰な窒素負荷が森林生態系の窒素循環に及ぼす影響が懸念されている。本研究では、埼玉県本庄市のコナラ林において降雨による窒素沈着の特徴を明らかするために、林外雨および林内雨中の溶存有機窒素(DON)と溶存無機窒素(DIN)の濃度とフラックスを評価した。林外雨(n=3)および林内雨(n=12)を、2022年4月18日から2022年12月24日に月1回の頻度で採取した。試料中の各種イオン濃度の測定には全自動栄養塩分析装置を用いた。
林外雨中の採取期間中の平均濃度は、DONで0.16- 2.83 mg/L、DINは0.32-2.15 mg/Lの範囲であった。一方、林内雨中の平均濃度は、DON は0.45- 6.62 mg/L 、DINは0.45- 7.34 mg/Lの範囲であった。この期間中、コナラ林における大気からのDON沈着量は、林外雨からが5.6 kg N/ha、林内雨からが8.9 kg N/haと推定された。一方、DIN沈着量は、林外雨からが6.3 kg N/ha、林内雨からが13.0 kg N/haと推定された。6月を除く全ての月で林内雨の沈着量が林外雨を上回っており、乾性沈着量はDONで 3.2 kg N/haで、DINで6.7 kg N/haであった。また、このコナラ林では、農業由来とされるNH4-N(9.2 kg N/ha)が、工場や自動車の排ガスに由来とされるNO3-N(3.1 kg N/ha)からの負荷を上回り、この両方の影響を受けた窒素化合物の大量負荷があると予想された。湿性沈着ではNH4-NがNO3-Nの1.7 倍、乾性沈着ではNH4-NがNO3-N の6.5倍で、乾性沈着によるNH4-Nの負荷(5.5 kg N/ha)が最も高かった。