| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-194 (Poster presentation)
複雑な生物地理学的背景を有する日本列島は、各地域に成立する生物相の違い(地域性)が示されてきた。ある地域の生物多様性を評価するには、そうした地域性の考慮が必要である。エコリージョンは、生態系を構成する生物種群や環境条件が類似するような地域とされる。そのため、エコリージョンは、国や県が実施する広域的な生態系の管理や保全を目的とした調査、モニタリングの基準としても有効なものである。陸域や淡水域をはじめとする生態系の調査やモニタリングにおいて、関連する生物相や環境データを基に提案されたエコリージョンの利活用が試みられているが、現状の河川のエコリージョン区分については魚類相を対象としたものに限定されている。
そこで本研究では、全国109の一級水系を対象とした「河川水辺の国勢調査(国土交通省)」で得られている底生生物データの中から水生昆虫の6分類群(カゲロウ類、カワゲラ類、トビケラ類、トンボ類、カメムシ類、コウチュウ類)を対象に地域ごとの類似性を解析した。「河川水辺の国勢調査」は、3巡目~6巡目(2001~2020年)を対象として20年分のデータを調査地点(1064地点)ごとに整理した。これらの整理データを基にTWINSPAN解析および、地理的距離を考慮したクラスタリングを用いて水生昆虫相を類型化し、地域性の単位となるエコリージョン区分を検討した。併せて、GIS(地理情報システム)を用いて各分類群の分布と関連する要因(e.g., 標高、河川次数、集水域面積)を解析した。本発表ではこれらの結果を基に、日本の水生昆虫におけるエコリージョン区分を提案し、既往の魚類のエコリージョン区分のパターンとの比較結果についても議論する予定である。