| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-195  (Poster presentation)

大雪山における高山性草本植物の景観遺伝学的研究
Landscape genetic study of alpine herbs in Mt. Taisetsu

*甲山哲生(東京大学), 亀山慶晃(東京農業大学), 雨谷教弘((株)野生総研), 工藤岳(北海道大学)
*Tetsuo KOHYAMA(UTokyo), Yoshiaki KAMEYAMA(Tokyo Univ. Agric.), Yukihiro AMAGAI(Wildlife Res. Inst. Co., Ltd.), Gaku KUDO(Hokkaido Univ.)

多雪地域の高山帯では、複雑な地形と強い季節風を反映して積雪分布の空間的不均一性が生じる。この特性によって、高山帯では狭い範囲で雪解けの時期や土壌の状態が大きく変動し、そこに生育する高山植物の多様性を駆動する重要な要因となっている。
 特に、地点間での雪解け時期の差異は、開花フェノロジーにダイレクトに影響を及ぼし、これが遺伝子流動を制限することで、局所集団間の遺伝的分化と形質の変化を生じさせることが予想される。これまでの研究で、こうした高山帯特有の環境の不均一性が生物多様性に与える影響についての理解が進んでいる。
 一方で、高山生態系は気候変動に非常に脆弱であり、地球規模で進む気温上昇が積雪量の減少や土壌の乾燥化を引き起こすことが予想されている。こうした環境の急激な変化は、高山帯の生物多様性に対してもまた大きな影響を及ぼすことが予想され、これらの変化を正確に把握し、適切な保全策を講じるためには、長期的な遺伝的多様性モニタリングが不可欠である。
 本研究では、北海道大雪山において、エゾコザクラ、ハクサンボウフウ、ミヤマキンバイ、ミヤマリンドウ、ヨツバシオガマの5種の高山植物を対象として、景観スケールでの遺伝的集団構造と遺伝的多様性を明らかにすることを目的とした。広範な環境を網羅するように設定した大面積調査区(225 ha)において、高密度かつ等間隔に採集した試料(0.25 haに1個体)を用いて、NGSによるマイクロサテライト遺伝子座の配列解読を行い、地点間での雪解け時期の違いが各種の遺伝的集団構造に与える影響について明らかにした。これらの研究成果は、高山帯の遺伝的多様性モニタリングの基盤となるデータを提供するものである。


日本生態学会