| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-199 (Poster presentation)
プランクトンは淡水生態系の低次生産者であり、水質を決める重要な生物群である。そのため、湖沼やダム湖では水質管理等のため、プランクトンモニタリングが行われている。しかし、モニタリングにあたっては人材不足や労力がかかるなどの課題が問題となっている。これら課題を克服するため、機械学習によるプランクトンの自動種判別・計数システムの開発研究が進められている。しかし、これまでの自動判別システムの教師データは主に海洋プランクトンを対象としており、水中カメラ等で撮影した解像度の低い画像が用いられてきた。そこで、本研究は湖沼やダム湖では水質管理に有用な淡水プランクトンを対象とする自動種判別・計数システム開発のための画像データベースを作成している。本データベースは3軸方向での画像結合が出来る顕微鏡により得られる高解像度画像を用いている点で秀でている。また、本データベースでは門~種の複数分類階級情報を付与している点も大きな特徴である。これらデータベースのうち、本発表では動物プランクトンのデータベースについて紹介する。
動物プランクトンデータベースを構成している画像は、日本全国の湖池沼・ダム湖87地点から採集した371試料を用いて取得した。これら試料から、40倍と100倍の検鏡像それぞれで独立したファイルを作り、合計90277枚、211タクサ(ワムシ類:126、枝角類:57、カイアシ類:28)の画像を格納した。これは、水辺の国勢調査対象タクサの57%にあたる。
本発表ではデータベースの概要に加え、これを教師画像として開発した自動種判別・計数システム(MLABN)の概要及び判別精度を紹介する。また、生態学的研究における活用例の一つとして、同所共存の見られるゾウミジンコ属2種(Bosmina longirostrisとBosmina tanakai)の捕食者に対する形態変動の比較についても紹介する。