| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-203  (Poster presentation)

環境変動下での樹木落葉分解における種多様性効果【O】
Species diversity effects on tree leaf litter decomposition in a changing climate【O】

*林夏帆(横浜国立大学), 高木健太郎(北海道大学), 梁乃申(国立環境研究所), 上田実希(日本女子大学), 岡田慶一(東京農業大学), 森章(東京大学)
*Kaho HAYASHI(Yokohama National University), Kentaro TAKAGI(Hokkaido University), Naishen LIANG(NIES), Miki UEDA(Japan Women's  University), Keiichi OKADA(Tokyo Univ of Agriculture), Akira MORI(The University of Tokyo)

 森林生態系において、落葉リター分解は物質循環の中心であり重要なプロセスの一つである。リター分解は形質、気候、分解者によって左右され、なかでも形質と気候による影響は著しい。分解はリター形質を決めるリター種の混合、種多様性効果による影響も知られているが、近年の気候変動下でのリター形質や種多様性との相互作用を探る研究はない。以上より本研究では、異なる環境下において種や形質の異なるリターは分解にどのように作用するのか解明することを目的とした。
 北海道北部に位置する北海道大学天塩研究林内の温暖化操作実験場において、リターバッグ法を実施した。この調査地の優占種であるミズナラ、ヤチダモ、カンバ、イタヤカエデ、シナノキの葉を用いて1~5種混合させたリターバッグを作成した。対照区、オープントップチャンバー(以下、OTC)を設置した操作区、OTCと赤外線ランプを設置した操作区の3つの環境を用意し、約5、12ヶ月後に回収した。回収後、残存リターの乾燥重量を秤量し、分解率を計算した。葉の化学的形質や各プロットにおける地温や含水率、窒素や炭素などの土壌化学データを測定した。
 結果、OTCと赤外線ランプを設置した操作区では乾燥化が生じ分解率が低くなる傾向が見られた。種組成、種数によっても分解率は変化し、特にヤチダモを含めることにより分解率は高くなる結果であった。一方で1種単体のヤチダモは環境に左右されることなく、最も高い分解率を示した。ヤチダモは窒素含有量が多く、分解が容易な形質であるためと考えられる。また種多様性効果も環境や種組成によって異なることが明らかになった。その背景には、ヤチダモを中心とする選択効果が見られた。本研究により、種特異的な形質が、多種との混合や環境条件との複雑な兼ね合いの中でも、特にリター分解に最も寄与していることを明らかにした。これは形質がリター分解に最も重要とである定説をさらに裏付けるものである。


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