| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-207  (Poster presentation)

放棄された水田に生じるプランクトン群集の変化
Changes in plankton communities in abandoned rice field

福田顕央, 津髙翔, 疋田大, *永野真理子(京都先端科学大学)
Akihiro FUKUDA, Sho TSUDAKA, Dai HIKITA, *Mariko NAGANO(KUAS)

近年増加している水田の休耕や耕作放棄は、洪水や土砂崩れを防ぐといった水田の物理的多機能性を果たせなくなるばかりでなく、水田生物の貴重な生息地の破壊となる。そこで本研究は、放棄前後のプランクトン相を観察することによって、放棄が低次の生物群集へ与える影響をについて考察した。対象とした田圃は、京都府亀岡市の曽我谷川流域に位置し、長期にわたり慣行農法が行われていた。しかし、2023年からは畔塗り、湛水作業や畔の草刈りなどが行われたものの、田植えが実施されず耕作されない状態となった。調査は2022年5月18日~9月5日、2023年5月25日~8月29日に毎年約20回行われた。調査は、気温、水温、水位、pHの環境測定と採水を行った。採水方法は、畦道をディスポカップで少しずつ採水しながら田圃を1周し、合計約3Lとなるようにした。採水後直ちに研究室に持ち帰り、1Lをプランクトンネット(NXX25、63㎛)を用いて濃縮し、ルゴール溶液で固定した。残りのサンプルは、サブサンプルとした。放棄前後で、環境状態はほとんど変わらなかった。放棄後の2023年は、水を入れてからほとんど手が付けられていなかった。プランクトン種数を放棄前後で比較すると、ほとんどの調査日で、放棄前のほうが多くなる傾向がみられたが、統計的には有意でなかった。しかし、種組成をみると放棄前後で優占種が異なり、放棄前はAnabaena sp.やSpirogyra sp.などの植物プランクトンが優占しており、放棄後はそのような傾向がみられなかった。水田は代掻きや中干しによる水位の変動があり、湛水のたびに増殖しやすい植物プランクトンが優占するのではないかと考えた。耕作されなくなった最初の年から、プランクトン群集には明白な変化が起こったことがわかった。今後は群集解析を進め、どのような要因がもっともプランクトン群集に影響するか、またこれが水田水域生態系をどのように変えるのかについて明らかにしたい。


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