| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-209  (Poster presentation)

マルハナバチ類の分布推定モデルの構築と機能多様性を考慮した保全重要地の評価
Conservation prioritization for bumblebee species considering functional diversity based on species distribution models

*石濱史子(国立環境研究所), 大野ゆかり(東北大学), 竹中明夫(国立環境研究所), 横山潤(山形大学), 井上真紀(東京農工大学), 中静透(森林総合研究所), 河田雅圭(東北大学)
*Fumiko ISHIHAMA(NIES), Yukari OHNO(Tohoku Univ.), Akio TAKENAKA(NIES), Jun YOKOYAMA(Yamagata Univ.), Maki N INOUE(Tokyo Univ. Agri. Tech.), Tohru NAKASHIZUKA(FFPRI), Masakado KAWATA(Tohoku Univ.)

マルハナバチ類やニホンミツバチは、大型の社会性の送粉昆虫であり、野生植物や農作物の花粉媒介に重要な役割を果たしている。世界的にも昆虫の多様性低下や個体数減少が懸念されている中、これらの送粉者の保全のために、保全重要地の特定が必要である。市民参加による花まるマルハナバチ国勢調査のデータに基づき、マルハナバチ類とニホンミツバチの分布推定モデルを構築した。分布推定モデルは、複数のアルゴリズムの平均を取ることで予測の頑健性を高める、アンサンブルモデルとし、一般化線形モデル、一般化加法モデル、ランダムフォレスト、ブースト回帰木の4つのアルゴリズムを用いた。調査バイアスは、Target Group Background法により補正した。このモデルにより推定した現在の分布に基づき、種の多様性の観点と、送粉機能の多様性の観点での保全優先順位付け解析を行った。送粉機能は、マルハナバチ類の送粉に関わる重要な形質である、口吻長に基づいて評価した。種の多様性に関する保全の目標は、それぞれの種の分布域の3割を保全する、送粉機能に関する目標は、口吻長の幅が広い地域3割を保全する、とした。
現在の分布推定の結果では、中部山岳域や北海道で特に種の多様性が高かったが、保全優先順位付けを行った結果では、これらの種多様性が高い地域に加え、瀬戸内海沿岸や千葉から福島にかけての平野部等も保全重要度が高かった。さらに送粉機能の多様性も考慮して保全優先順位付けを行うと、中部山岳や北海道の保全重要度がより高くなった。中部山岳や北海道は、高標高・低温域であり、寒冷な地域を主要な分布域とするマルハナバチ類にとっては将来の気候変動に際してのレフュージアになると考えられ、機能多様性を考慮した保全優先順位付けの結果は、気候変動適応策としても有効的であると考えられる。


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