| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-211 (Poster presentation)
ニッチの違いは種の共存における重要な要素であり、現在の種多様性や共存を理解する上で、ニッチ多様化の進化的な背景を知ることは重要である。カキノキ属は熱帯に広く分布しており、東南アジアの低地熱帯雨林では、サラノキ属、フトモモ属に次いで多様性が高く、同所的にも多数の種が生育している。ニューカレドニアのカキノキ属では、適応放散とそれに伴う気候ニッチの進化および遺伝子移入が明らかになっている。一般的に、遺伝子移入は新しい形質を生じることで種分化やニッチの多様化を促進する可能性があり、他の地域のカキノキ属で同様の多様化が起きていた可能性も考えられる。そこで本研究では、東南アジアのカキノキ属における過去の交雑が共存種間のニッチの違いにどのように影響したかを調べることを目的とし、マレーシアボルネオ島に設置された大面積調査区に生育するカキノキ属の系統と過去の交雑の推定を行い、各種の動態データから定量したニッチとの関係を解析した。調査区で採取したカキノキ属のDNAからGRAS-Di法でSNPsを取得し、RAxMLで系統推定を行った。この系統樹をもとにDsuiteを用いてD統計量に基づいた過去の遺伝子移入を推定した。結果、調査区のカキノキ属では複数のクレードで過去の遺伝子移入があったことが示唆された。これらの交雑について、交雑に関わった種と近縁種のニッチを比較しながらニッチの多様化について考察する。