| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-215  (Poster presentation)

昆虫における翅形態と関連した交尾器形態進化の検証
Correlated evolution of wing and genital morphology in insects

*篠原忠(静岡大学)
*Tadashi SHINOHARA(Shizuoka Univ.)

動物の交尾器進化については,これまで配偶に関わる要因(種内の性淘汰,種間交雑の回避など)が主に研究されてきた.一方で,配偶以外の要因が交尾器進化に及ぼす影響については実証例が少ない.カメノコハムシ亜科に含まれる多くのハムシでは,成虫の背面を覆う鞘翅の周囲に扁平な縁または鋭いトゲが張り出し,これらの構造によって捕食を回避していると考えられている.カメノコハムシ類は,交尾の際にオスがメスの上にマウントし,体内に格納されているオス交尾器を露出させメスに挿入する.その際,メスの鞘翅末端に張り出した扁平縁やトゲといった張り出し構造は,オス交尾器がメス腹部へ接触するのを妨げると考えられる.そのため,鞘翅末端の張り出し構造を避けて交尾できるオス交尾器形態が有利になるような自然淘汰が作用する可能性がある.

本研究では,張り出し構造の発達が交尾成功に及ぼす影響を明らかにするため,張り出し構造を操作した交尾実験を実施した.イチモンジカメノコハムシを対象とし,メスの鞘翅末端にサイズの異なる紙を貼り付け,張り出し構造の発達程度が異なる2タイプ(非伸長,伸長)のメスを用意した.いずれかのタイプのメス1個体をオス1個体とともにシャーレに入れて交尾行動を観察した結果,張り出し構造のサイズを変えなかった非伸長メスに対しては,マウントしたすべてのオスで交尾が成功した.一方,伸長メスに対しては,マウントしたすべてのオスで交尾が失敗し,張り出し構造の発達が交尾成功率を低下させる可能性が示唆された.また,張り出し構造サイズとオス交尾器サイズの相関進化を検出するため,これらのサイズを測定し種間比較を行った.これらの結果を踏まえ,自然淘汰と性淘汰の相互作用がもたらす交尾器形態多様化メカニズムついて議論する.


日本生態学会