| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-224  (Poster presentation)

相利系の個体群動態と進化動態の相互作用に関する数理モデル
A mathematical model on interaction between population and evolutionary dynamics in a mutualistic system

*藤田大樹, 江副日出夫(大阪公立大学)
*Daiki FUJITA, Hideo EZOE(Osaka Metropolitan Univ.)

 相利は、生態系のなかで重要な相互作用の一つであり、相利系の既存の理論的研究においては、宿主あるいは共生者の個体群動態と相利に関わる形質の進化動態は別々に解析されることがほとんどであった。そこで本研究においては、相利系における共生者の個体群動態と進化動態との相互作用を解析した。
 単系統の宿主と、協力者/裏切り者の2系統の共生者からなる相利系を考える。宿主各個体が共生する共生者の個体数は可変であり、その期待値は共生者個体群密度と宿主個体群密度の比に比例するとした。共生者のうち協力者のみがコストを払って宿主に利益を与えるが、宿主からの報酬は共生者全体で均等に共生者が分割する。共生者、宿主の繁殖率はそれぞれ共生から得られた正味の利得に比例すると仮定した。
 まず、宿主個体群密度wを固定し、共生者個体群内の協力者の頻度pと共生者個体群全体の密度zの時間動態を解析した。その結果、正の中立安定平衡点が存在し、pzはこの平衡点の周りを周期振動することがわかった。このとき、平衡点から遠い軌道ほど宿主と共生者の間でやり取りされる利益の時間平均は大きくなる。
 次に、wを変数とし、宿主の動態に較べて共生者の動態の時間スケールが速いと仮定して、p, z, wの動態を解析した。宿主および共生者の個体群に密度効果が存在しない場合、pは一定の値に収束するが、zwは際限なく増加する。それに対し、共生者死亡率に密度効果を加えると、系全体の動態が安定平衡点に収束する。このとき、まずp, zの振動が収束した後で、宿主の個体密度wがゆっくり変化して安定平衡点に達する。また、宿主死亡率に密度効果を導入した場合も系全体の動態は安定平衡点に収束するが、この場合はp, zが振動を続けながらwが変化し、安定平衡点に収束するという動態を示す。


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