| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-225 (Poster presentation)
日本のメダカ(Oryzias latipes, O. sakaizumii )は青森から沖縄まで幅広い気候環境に分布するため、気候環境への適応進化をもたらす遺伝子群を探索できるモデル系である。適応進化を検証する上では自然淘汰が働いた遺伝子群を特定することが重要であるが、それらの知見は十分ではない。そこで本研究は、日本海側に分布するキタノメダカ O. sakaizumii 野生個体の全ゲノムリシーケンス解析データを用いた集団ゲノム解析を行って、自然淘汰の痕跡がある遺伝領域を探索した (北津軽, 青森, 新潟, 敦賀, N = 40)。核ゲノムで遺伝的多様性の高い領域にまず注目すると、塩基多様度πの高い領域がchr2, 8, 11の染色体を中心とした複数の染色体に散在していた。Gene Ontology Enrichment 解析でこれらに含まれる遺伝子機能を確認すると免疫機能に関連する遺伝子が濃縮していた。従って、免疫機能に関連する平衡淘汰で高い塩基多様度が維持されている可能性が考えられた。次に、ゲノムワイド平均から外れてTajima's Dの低い領域に注目したところ、chr9, 11, 12, 19の4領域に集中的に存在した。しかしながら、これら領域はいずれも同じ染色体上の近傍領域と比べて塩基多様度πは小さくなかったことから、自然淘汰の痕跡が示す傾向には一致していなかった。また、Tajima’s Dのゲノム全体での分布の中央値も、-2.36と負に大きく偏ったことから、集団サイズの変動など過去の集団動態による対立遺伝子頻度の分布のバイアスを反映することが示唆された。