| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-231 (Poster presentation)
多くの生物が短い期間に大量に絶滅するようなイベントが地球の歴史の中で複数回起こったことが知られている。その原因としては隕石の衝突や大規模な火山活動など様々なものが挙げられているが、直接生物に影響する要因としては結果として引き起こされる一次生産量の減少を挙げている場合が多い。そこで本研究ではYoshida (2008)に腐肉食者を加える改良を行った生態系進化モデルを用いて、生態系の進化の途中で一次生産量を急激に一定期間85%減少させるシミュレーションを行った。その結果、約80%の動物種が絶滅し、約60%の動物のクレード(共通の祖先から派生した種のグループと定義)が絶滅した。また、高次の捕食者が絶滅しやすいこと、特に腐肉食を行わない肉食動物、雑食動物が絶滅しやすいこと、種多様性の低いクレードが絶滅しやすいという結果が得られた。これらの結果はこれまでの化石記録の解析からの報告と整合的である。このモデルを用いて、クレード内の種多様性変動パターンとクレードの絶滅確率の関係についても解析した。例えば白亜紀末の大量絶滅事変の時に絶滅した分類群の多くが絶滅のかなり前から多様性が減少していることが報告されており、これはかつては白亜紀末の隕石衝突説への反論の根拠の一つとされていた。しかしシミュレーションの結果を解析したところ、クレード内の種多様性変動の傾向(増加傾向か減少傾向か)は長期的、短期的に関わらず、一次生産量が急減した時の絶滅確率とはほぼ関係ないことが明らかとなった。しかし、多様性変動パターンの全てが無関係ではない。繁栄のピークが過ぎてから時間がたったクレードは絶滅しやすい傾向が見られた。クレード内の多様性が低いクレードは一次生産量が急減した時に絶滅しやすいが、低い多様性を保ったまま長期間生き延びているクレードや、元々高い多様性を保っていたが一時的に多様性が低くなっているだけのクレードは比較的絶滅率が低いことが明らかとなった。