| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-232 (Poster presentation)
侵略的外来植物は土壌微生物群集を改変することで被侵略生態系に影響を与え、これらの改変はその外来植物の局所的個体群密度のさらなる増加を促進しうる。このような外来植物と土壌微生物間の関係において、外来植物の個体群の局所的密度の違いに伴う土壌微生物群集や土壌の違いを理解することは、侵略に伴う個体群密度の増加の影響を考慮する上に重要であろう。実際、近年報告されるポット実験では、土壌微生物群集が外来植物の密度に依存して変化することが示されている。このような個体群密度依存的な土壌微生物群集の違いは、自然生態系で見られるのだろうか。 発表者らは、東アジア在来で米国フロリダ州では侵略的外来種となっているマンリョウ(Ardisia crenata)の侵略的拡大が進行中で局所的な密度勾配が見られるフロリダ州の湿潤な森林サイト(約1ha)にて、「高密度、低密度、未侵入」という3つの密度レベルを比較した。それぞれに1m2サブプロットを25個ずつ設置して、各サブプロットから土壌を採取し、DNA抽出と土壌化学特性分析を行った。抽出したDNAから真菌ITSと細菌16S領域をPCR増幅し、Illumina Miseqでシーケンスを行った。以上により、土壌真菌・細菌群集構造、また土壌化学的特性を3つの密度レベル間で比較した。 PERMANOVAを用いた統計解析の結果、真菌群集は密度レベル間で有意に異なっていた。細菌群集は未侵入と低密度の間には違いが認められなかったが、高密度とその他では有意な違いが見られた。土壌化学特性は高密度とその他のレベルの間で大きく異なっていたが、未侵入と低密度との間では有意な違いが見られなかった。これらの結果は、ある閾値以上の外来植物の局所密度が土壌環境の変化に重要な役割を果たすことを示唆する。