| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-233  (Poster presentation)

ナガエツルノゲイトウの定量的分布把握を目的とした衛星によるモニタリング手法の開発
Development of monitoring method using satellite image for identifying quantitative distribution of Alternanthera philoxeroides

*工藤尚史((株)建設環境研究所), 阿比留裕信(霞ヶ浦河川事務所), 武山直史((株)建設環境研究所), 並木和弘((株)建設環境研究所), 伊川耕太((株)建設環境研究所), 野村大祐((株)建設環境研究所)
*Naofumi KUDO(CE & ET Consultants Co.,Ltd.), Hironobu ABIRU(Kasumigaura River Office, MLIT), Naofumi TAKEYAMA(CE & ET Consultants Co.,Ltd.), Kazuhiro NAMIKI(CE & ET Consultants Co.,Ltd.), Kota IKAWA(CE & ET Consultants Co.,Ltd.), Daisuke NOMURA(CE & ET Consultants Co.,Ltd.)

 ナガエツルノゲイトウAlternanthera philoxeroidesは、南米原産の多年草で主に水辺に生育する。日本では1989年に定着が確認され、以降茨城県以西の都府県に広がり、現在も分布が拡大している。茎断片から容易に発芽する、茎が千切れやすく水に浮く、乾燥にも強いなどの特徴があり、生態系や農業への悪影響のおそれから2005年には特定外来生物に指定され各地で駆除活動等が行われているが、急速な分布拡大に駆除が追い付いていない。
 本研究では霞ヶ浦(西浦)を対象に、水際部の広範囲に拡散したナガエツルノゲイトウの分布を半自動的・定量的に把握し、駆除対策に活用するために、衛星画像を用いたナガエツルノゲイトウのモニタリング手法を開発した。
 この手法は、衛星画像と数値地形情報を用い、ナガエツルノゲイトウが①湖面に張り出して生育する、②分光反射特性が在来植物群と異なるという2つの特性に着目した。まず、衛星画像と数値地形情報の水崖線を重ね合わせる工夫により、湖面に張り出した植物群落を候補として抽出した。次に、可視域および近赤外域の反射特性から、ナガエツルノゲイトウ群落と在来植物群落を識別可能であることを突き止めた。
 霞ヶ浦の新利根川合流部から妙岐ノ鼻の区間を対象とし、最新の衛星画像を用いて本手法と従来の目視調査とを比較した結果、両者に顕著な差異は生じなかった。さらに、調査の省力化、高い再現性(人による差異や見逃しが生じにくい)などのメリットを確認した。一方で、陰影部や橋の下などの画像解析は不向きであることも確認した。
 開発した手法を用いることで、広範囲にナガエツルノゲイトウの分布の把握や経年比較をすることが容易となり、侵入初期段階での駆除や、集積しやすい箇所での集中的な駆除などに有効活用できる。
 今後は、撮影頻度が高い低解像度衛星画像での解析や撮影時期によるばらつきの解消などの課題を解決し、より簡便に適用できるよう、実用的なものに改良していく。


日本生態学会