| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-235 (Poster presentation)
外来種の侵入は生物多様性損失の主要因の1つであり、侵入先で生物群集の均質化を引き起こす。山岳域は高山性種を含む地域固有の群集から成る保全上重要な生態系であり、環境条件が厳しいことから外来種侵入のリスクが低いことが知られている。一方、山岳域に特有の建造物や登山等の人為活動が、非高山性の外来種の導入や定着を可能にすることが報告されている。山岳域の低標高域と高標高域をつなぐロープウェイは、これまであまり注目されていないが、外来植物の長距離かつ高標高差間の散布経路として機能しうる。山岳域の在来植物群集では標高傾度に伴う種の入れ替わりが顕著にみられるが、このような経路を介した外来植物の群集構造は異なる傾向を示すと考えられる。本研究では、ロープウェイを有する全国14山岳域を対象に、山岳域での外来植物の群集形成機構を検証した。
各山岳域においてロープウェイの始発(低標高域)および終着地(高標高域)に調査サイトを設定し、植生調査をおこない、地理的データを収集した。在来種および外来種に対し、種数(α多様性)および群集の非類似度(β多様性)における空間的な種の入れ替わりの程度を解析した。また、外来植物種の高標高域での在確率に影響する要因を解析した。
結果、外来種約70種を含む約500種を記録し、全山岳域の高標高域に1種以上(計35種)の外来種を確認した。在来種のうち高山性種数は標高に伴い増加した一方、外来種数は標高に伴い低下した。在来植物の種の入れ替わりの程度は標高および経度が離れるほど大きかった一方、外来植物の種の入れ替わりの程度は小さく、地域性も認められなかった。また、外来種の高標高域での在確率は低標高域での存否と強く関係していた。これらの結果から、全国の山岳域の高標高域に人工的な散布経路を介して均質な外来植物群集が形成されており、散布源となる低標高域での外来種管理が重要であることが示唆された。