| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-236 (Poster presentation)
神奈川県の三浦半島では、特定外来生物アライグマ(Procyon lotor)の定着が1990年代に確認されており、環境省や神奈川県の生息状況調査等により2000年代後半には国内でも高密度に生息する地域の一つとされた。アライグマによる被害問題も比較的早い時期から顕在化しており、在来生物の捕食や主に家屋侵入等の生活被害を防ぐため、自治体やNPO等による防除(捕獲)が長年にわたり実施されている。これまで神奈川県では、3次メッシュ毎の捕獲数及び捕獲努力量(罠日)の集計に基づくCPUEを、相対的な個体数密度の指標として用いてきた。経時的な捕獲圧をかけた集団では、性年齢構成や繁殖実態も変化している可能性がある。そこで本研究では、三浦半島に位置する葉山町において、2008-2022年の捕獲個体を回収し、性別、齢構成(0歳:J、1歳:Y、2歳以上:A)、雌の繁殖実態を調べた。また、2010-2018年の葉山町における捕獲努力量との関連について検討した。葉山町における幼/成比(J/YA)は年毎の変動はあるものの、雄で高く雌で低いことが示された。捕獲努力量は2012年以前に比べて2013年以降は低下しており、2008-2012年の幼/成比について、雄は著変がみられない一方、雌では減少傾向がみられた。2013年以降は全体の捕獲数も少ないがCPUEは増加しており、雌雄共に幼/成比は上昇傾向がみられた。雌の繁殖実態として、妊娠または胎盤痕の確認による繁殖参加個体の割合は1歳で0-80%、2歳以上で43-100%と年毎の変動は大きいが、捕獲努力量との関連は認められなかった。アライグマは雌の定住性が高く、雄の幼獣は分散期の移動性が高いことが知られている。高い捕獲圧は、成獣雌の除去による生産性の低下、並びに幼獣雄の移入制御に関与した可能性がある。今後また捕獲圧の上昇に向けて地域住民にはたらきかけると共に、捕獲個体の性年齢構成や繁殖実態を継続的にモニタリングし、その結果をフィードバックすることが重要である。