| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-238 (Poster presentation)
外来種は、生物多様性や農業、公衆衛生など人間社会に深刻な被害をもたらしている。そのため、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)等において、外来種による悪影響の低減及び緩和が求められている。外来種管理の推進を目的として、外来種の捕獲に対する報奨金制度をはじめ様々なインセンティブの付与政策・施策が導入されている。しかしながら、このような捕獲に対する経済的インセンティブの付与が外来種の捕獲や悪影響の緩和にどの程度貢献しているのかほとんど評価されていない。
そこで本研究では、北海道におけるアライグマ管理を事例として、アライグマの捕獲とそれに対する社会経済的インセンティブの効果を定量的に評価する。具体的な研究目的は、以下の問いに答えることを通して効果的なインセンティブ設計に関して考察することである:
1)アライグマの捕獲が農業被害の緩和に貢献しているのか、2)経済的インセンティブがアライグマの捕獲頭数を向上させるのか、3)経済的インセンティブは農業被害の緩和に貢献するのか?
本研究では、北海道における下記の4種類のデータセット用いて計量経済分析を行なった。1)アライグマのワナかけ日数と捕獲数、2)アライグマの捕獲に対するインセンティブに関するデータ、3)アライグマによる農作物被害額に関するデータ、4)農業集落カード
分析の結果、アライグマのワナかけ日数は農業被害額には影響を与えないが、捕獲数は農業被害額の減少に貢献することがわかった。また、捕獲に対する報奨金の付与はアライグマのワナかけ日数や捕獲数、農業被害額に影響を及ぼさないことがわかった。一方で捕獲個体の処理に対する経済的支援などが捕獲数に影響を及ぼすことがわかった。本研究の結果は、アライグマによる農業被害の緩和には、捕獲に対するより包括的な経済的インセンティブの付与が重要であることを示唆している。