| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-240 (Poster presentation)
野生動物における感染症の伝播は個体群へ負の影響を与える場合がある。そのため、希少種の保全管理において、感染症のリスク把握は重要な課題である。希少種に感染し負の影響を与えうる存在として広東住血線虫Angiostrongylus cantonensisが挙げられる。本種は寄生線虫類の一種であり、陸生軟体動物を中間宿主とし、ネズミ類を終宿主とする生活環を持つ。また、終宿主であるネズミ類以外が広東住血線虫に寄生された陸生軟体動物を採食することで本虫に感染し、病態を示した例もある。
沖縄島北部の森林に生息するケナガネズミDiplothrix legata (環境省RDB:絶滅危惧IB類)においても、広東住血線虫への感染例がある。ケナガネズミへの広東住血線虫の感染リスクを把握するためには、ケナガネズミの生息域において本虫の浸淫状況を明らかにする必要がある。本研究では、沖縄島北部において中間宿主である陸生軟体動物における広東住血線虫の浸淫状況を明らかにすることを目的とした。
本研究では、広東住血線虫の中間宿主であることが報告されており、沖縄島北部の森林内に広く分布しているシュリマイマイSatsuma mercatoria、および既知の広東住血線虫の中間宿主の陸生軟体動物を対象とした。沖縄島北部の広東住血線虫に感染したケナガネズミが確認された地域とそれ以外の地域で陸生軟体動物を採取し、圧平法および消化法によってAngiostrongylus属の幼虫を確認した。本講演では、沖縄島北部における広東住血線虫のこれらの中間宿主への感染状況を報告する。