| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-241 (Poster presentation)
半自然草原の減少は全国的におきており、草原生植物が絶滅危惧種に選定されることも少なくない。そこで、神奈川県内の草原生植物の減少が起きているのかを明らかにし、その変動の要因を考察した。
草原生植物は、過去の植生調査データと神奈川県レッドデータ選定種を基に選定した。選定種の神奈川県内の分布状況について、神奈川県植物誌2018の標本データを用い、~1988年に採られた草原生植物の種数と1989~2018年に採られた草原生植物の種数を集計し、土地利用(国土交通省の土地利用細分メッシュデータ)や環境省植生図の草原面積と比較を行った。
3次メッシュごとに、年代ごとの草原生植物と土地利用を比較した所、草原生植物減少率が高いメッシュでは、田んぼ以外の農耕地が有意に減少していた。
環境省植生図を神奈川県植物誌調査区(およそ市町村区に相当)と比較したところ、山間部では、草原植生面積と正の相関があった。都市部では市街地の面積と負の相関があったが、草原植生との相関はなかった。ただし、レッドデータ選定種と草原植生では正の相関があった。山間部と都市部で、草原生植物が10種以上出現している3次メッシュを対象に、草原植生の面積と種数の比較をしたところ、都市部では草原植生の面積が小さなメッシュでも多くの草原生植物が出現していることが明らかになった。
以上のことから、土地利用図や植生図に表されないような小規模な草原に草原生植物が残っている可能性が示唆された。実際、都市部では、緑地、公園、霊園などを含むメッシュで草原生植物の種数が多い傾向がみられ、電子国土による過去の空中写真を確認したところ、1960年代まで里地里山が広がっていた場所を緑地や公園とした場所であった。
神奈川県の半自然草原は、県西部にわずかに残っているが、大部分は既に消失している。しかし、草原生植物は、市民の森や緑地、公園など、人の手が入る環境で小規模ながら維持されていると考えられる。