| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-244  (Poster presentation)

「草原生植物」という用語を用いる際の生態学者の草原観
How do ecologists perceive grasslands when using the term "grassland plants"?

*橋本佳延(兵庫県博), 澤田佳宏(兵庫県立大学院, 淡路景観園芸学校), 松村俊和(甲南女子大学)
*Yoshinobu HASHIMOTO(Mus. of Nat. & Hum. Activities), Yoshihiro SAWADA(University of Hyogo, ALPHA), Toshikazu MATSUMURA(Konan Women's Univ.)

【背景】草原生態系の生物多様性の評価などの指標として「草原生植物」がしばしば用いられる。草原研究者の間では「草原生植物」の定義は「草原に生育する植物」という大まかとらえ方では共有されているものの細部において見解が異なり、草原生植物の判定に揺らぎがある。このような揺らぎが生じるのは、経験に基づく「草原観」が研究者によってまちまちであることが要因である可能性がある。
【目的】草原研究者の草原観の概要・揺らぎの幅を把握し、草原生植物の定義と草原観との関連性を分析する。
【方法】2023/3/18から4/2にかけて生態学会MLおよび植生学会MLに加入する、草原植生の調査・研究経験をもつ者にオンラインアンケートを行った。設問は択一式または複数選択式とし、草原観に関する8問(草原生植物の言葉から想起される植生景観、管理方法・現象、立地環境など)と回答者の草原研究・調査経験に関する7問(調査研究歴、調査季節、調査植生、調査方法など)の計15問を設けた。
【結果】84人から回答を得た。
「草原生植物」から想起される植生景観の択一設問では「ススキ、チガヤ、シバなどの陸生のイネ科草本が優占する植生」の回答が85.7%と最も高かった。「草原生植物」から想起される草原の管理方法や現象を問う択一設問では「人為攪乱(火入れ)」が34.5%、「人為攪乱(採草)」が31.0%と拮抗していた。「草原生植物」から想起される立地環境を問う択一設問では「山地」が56.0%と最も高かった。草原生植物の定義についての択一設問では「草原を主な生育地とするが、他の環境にも生育する種も含む」が84.5%を占めた。
調査経験が最も多い草本植生についての択一設問では「ススキ,チガヤ,シバなど陸生のイネ科草本が優占する植生」が61.9%と最も多かった。
発表では草原観と調査経験等の関係性についての解析結果も踏まえて考察する。


日本生態学会