| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-246  (Poster presentation)

耕作放棄地の鳥類・植物多様性を規定する要因:全国規模の野外調査から
Nationwide assessments of avian and plant diversity in abandoned farmland

*北沢宗大(北海道大学, 国立環境研究所), 山浦悠一(森林総合研究所), 河村和洋(森林総合研究所), 先崎理之(北海道大学), 中村太士(北海道大学)
*Munehiro KITAZAWA(Hokkaido Univ., NIES), Yuichi YAMAURA(FFPRI), Kazuhiro KAWAMURA(FFPRI), Masayuki SENZAKI(Hokkaido Univ.), Futoshi NAKAMURA(Hokkaido Univ.)

耕作放棄地の面積は世界的に増加し続けると予測されている。一般的に耕作地の放棄は生物多様性に負の影響を与えると考えられているが、地域生態系の受動的再生の機会として生物多様性保全に貢献する可能性もある。それゆえに、放棄後に耕作地に成立する生態系を理解し予測することは、農地景観における生物多様性の保全及び再生を進める上で喫緊の課題である。しかしながら、放棄後年数に応じて成立する群集組成と、それに影響する空間的な要因は広域的に明らかになっていない。本研究では、日本各地の耕作放棄地56地点における鳥類調査、および114プロットの植生調査から、各機能群の種数および、個体数あるいは出現頻度に影響する要因を、階層群集モデルを用いて明らかにした。
  年平均気温は乾性高木、つる植物、湿性一年生草本の出現頻度に正に、湿性木本、湿性多年生草本と湿原性鳥類の個体数に負に影響した。周囲の森林率は、乾性木本、つる植物、および森林性鳥類に正に影響し、湿性多年生草本と湿原性鳥類には負に影響した。放棄から年数が経過した場所ほど、湿性多年生草本の出現頻度が低く、また森林性および草原性鳥類が多かった。地形的湿潤指数(TWI)は植物ではつる植物にのみ影響したのに対し、鳥類では森林性鳥類には負に、草原性、湿原性鳥類には正に影響した。また、森林性鳥類の個体数は放棄畑および放棄草原で多かったが、湿原性鳥類の個体数は放棄水田で多かった。
  耕作放棄後に成立する群集は、気温のようなマクロスケールの要因、また地形や土地利用履歴、放棄後の経過年数に応じて特徴づけられた。すなわち耕作放棄地は立地条件に応じ、様々な生息地選好性をもつ生物に生息地を提供しうる。特に湿原生態系は大幅に減少してきたため、気温が低い地域の湿潤な放棄水田は、湿原性生物の代替生息地として機能することが期待される。


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