| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-248  (Poster presentation)

分布南限集団におけるキキョウ科ツリガネニンジン類の訪花昆虫相と種子生産
Pollination and seed production of Adenophora triphylla (Campanulaceae) in populations at the southern limits of its distribution in Japan

*岡崎純子(大阪教育大学), 長谷川匡弘(大阪市立自然史博物館), 古井陽登(大阪教育大学), 木場勇樹(大阪教育大学), 木下桂(京都大学), 木下栄一郎(金沢大学)
*Junko OKAZAKI(Osaka Kyoiku Univ.), Masahiro HASEGAWA(Osaka Mus.  Nat.  His.), Haruto FURUI(Osaka Kyoiku Univ.), Yuki KOBA(Osaka Kyoiku Univ.), Kei KINOSHITA(Kyoto Univ.), Eiichiro KINOSHITA(Kanazawa Univ.)

キキョウ科ツリガネニンジン類は日本では北海道から沖縄まで分布し,海岸から亜高山帯まで多様な草地環境に生育する広域分布種である。その分布南限の沖縄県では遷移の進行や開発などで集団が減少し,準絶滅危惧種に指定されている(沖縄県,2017)。このような種群の保全には野外での個体数調査だけでなくその交配様式や個体群で十分な種子生産が行われているのかの情報が必要であるがこの種についての研究はほとんどされてこなかった。そこで本研究では分布南限2集団で訪花昆虫相とそれに関連した蜜分泌特性,結実実態を明らかにしした。調査は2023年11月と12月に沖縄島と渡嘉敷島の2集団で行った。その結果,両集団ともに局所的には数百から数千株が生育し,結実率はいずれも50%以上と十分な種子生産が行われていることが明らかになった。昼間夜間ともに訪花昆虫が確認されその訪花頻度は本土での調査と比べても高かった。ただし昼間の訪花昆虫はほとんどが盗蜜・盗粉行動を示し,有効な訪花昆虫は夜間の蛾類であることが示された。また蜜分泌は日没後から深夜にかけて起こり,昼間には分泌が行われなかったことから夜間の訪花昆虫に対応した蜜分泌特性をもつことが明らかになった。これらのことから調査した2集団は現状ではいずれも十分な交配と種子生産が行われていることが判明した。しかし,沖縄島集団では草原の荒廃が進みつつあり,今後生育適地の消失と本植物個体群の縮小が懸念される。一方,渡嘉敷島集団の調査地は公的機関による緩やかな草地管理が行われ本種の適切な生育環境が維持されており,この集団が周辺に点在する局所集団体への種子供給のソース個体群として機能していると考えられた。


日本生態学会