| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-250  (Poster presentation)

復田後の土壌の化学性と雑草の種組成の変化~無農薬・無肥料田と慣行農法田の比較~
Changes in soil chemistry and weed species composition after the restart of cultivation in rice paddy fields

*石井潤(福井県里山里海湖研)
*Jun ISHII(Fukui Pref.)

 本研究では、休耕後復田されて、無農薬・無肥料で耕作される水田(自然農法田)と農薬と化学肥料を使用して耕作される水田(慣行農法田)の土壌の化学性(可給態窒素、CEC、C/N比)および雑草植生の年変化を調査した。調査地は、福井県の若狭町仮屋地区の水田(16筆)である。仮屋の水田は、お米の生産後ブロッコリーの栽培が行われた後、休耕された。そして2020年度から復田に向けた管理が始まり、順次お米の生産が再開された。本研究で調査した水田の2020~2022年度の耕作・管理履歴は、3年間休耕(以後、「休耕」とする)、3年間耕起による管理(以後、「管理」とする)、2年間または1年間耕起による管理後復田(以後、それぞれ「1年間」と「2年間」とする)、復田して3年間お米を生産(以後、「3年間」とする)の5タイプである。参考として、向笠地区の休耕田(1筆)でも調査した。各水田に方形区を設置し、土壌の化学性は2021年度と2022年度の2回調査し、雑草植生は2022年度に1回調査した。
 仮屋の水田は、向笠の休耕田に比べて可給態窒素、CEC、C/N比ともに値が同等か低い傾向にあった。一方、仮屋の復田後1~3年間の水田間の比較では、概ねどの分析項目も、明瞭な変化傾向は認められなかった。しかし、同じ水田での年間の比較では、自然農法田では可給態窒素、CEC、C/N比ともに減少する傾向があったのに対して、慣行農法田では可給態窒素は逆に増加し、CECとC/N比は減少する傾向があった。
 雑草植生の調査結果では、種数は復田後自然農法田と慣行農法田ともに少ない傾向にあり、植被率は自然農法田で高く慣行農法田で低い傾向を示した。出現種の被度データを用いてMorisita-Horn の類似度指数と非計量多次元尺度法(NMDS)により分析した結果、雑草植生は休耕田、管理田、自然農法田、慣行農法田で明瞭に分かれた。しかし、自然農法田と慣行田ともに、復田後の年数の違いによる種組成の明瞭な変化傾向は認められなかった。


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